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オートバイに対する感受性に共通項を見出したよ。花村萬月『自由に至る旅』を読む。

投稿日:2020年9月28日 更新日:

Hanamura-mangetsu

花村萬月を知らなかった

『自由に至る旅~オートバイの魅力・野宿の愉しみ』という本を読んだ。口語体で書かれてて読みやすいこともあり、2時間くらいで読了した。著者は小説家の花村萬月という人。残念ながらこの人の書いた小説は読んだことがない。

↓下のサムネイル画像がAmazonへのリンクになっています。


吉川英治文学賞と芥川龍之介賞(芥川賞)を獲っているから、優れた文学者なんだと思う。機会があれば小説も読んでみようかな。ただぼくはいまあんまり小説を読みたい気分ではないので、少し先になるかも。

略歴を見るとかなり破天荒なお人の様子。

花村萬月

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 東京都生まれ。父親は明治の生まれで、母親とは30歳ほど離れていた。生まれて間もなく蒸発した父親が小学校入学後に戻り、 旧仮名遣いの本で読書を強制される。父親の方針により小学校を休みがちになったが、様々な学問の基礎を父親から教わる。問題行動の多い子どもであったため小学校6年のときに 児童相談所に送られ、 福祉施設の東京サレジオ学園付属小平育英学院 サレジオ中学校へ進む。卒業後は都立高校に進学したが、3日目に喧嘩が原因で退学。17歳で 京都に移り、 ヒモ生活や肉体労働などで食いつなぐ。 ギターが弾けたことから、20歳で キャバレー回りのミュージシャンになり、東京・京都・福岡などで活動。 薬物中毒から アル中になり入院。退院後は 歌舞伎町で 博打三昧をしていたが、金持ちの 人妻と知り合い、ともに日本中を旅する。その後、 同棲していた クラブ ホステスの金で 北海道旅行に行き、そこで綴った日記が 旅行記のコンテストで佳作になったことで、小説家を目指すようになる。1989年に 小説すばる新人賞を受賞しデビュー。1998年には 吉川英治文学新人賞、 芥川龍之介賞を相次いで受賞する。 2009年、 花園大学 の客員教授に就任。 『ゴッド・ブレイス物語』集英社、1990 のち文庫 『眠り猫』徳間書店、1990 のち文庫、新潮文庫 『猫の息子-眠り猫II-』トクマ・ノベルズ、1994 のち文庫、新潮文庫 『重金属青年団』角川書店、1990 のち文庫 『屠られし者、その血によりて』徳間書店、1991(1994年に『紫苑』に改題、ノベルス)のち文庫 『渋谷ルシファー』集英社、1991 のち文庫 『なで肩の狐』トクマ・ノベルズ、1991 のち文庫、新潮文庫 『ブルース』角川ノベルズ、1992 のち文庫 『真夜中の犬』光文社カッパノベルス、1993 のち文庫 『月の光 ルナティック』広済堂出版、1993 のち文春文庫 『ヘビィ・ゲージ』毎日新聞社、1993 のち角川文庫 『永遠の島』学習研究社、1993

特に下に引用したあたりは痺れるね。文学者だなぁ。(笑)

問題行動の多い子どもであったため小学校6年のときに 児童相談所に送られ、 福祉施設の東京サレジオ学園付属小平育英学院 サレジオ中学校へ進む。卒業後は都立高校に進学したが、3日目に喧嘩が原因で退学。17歳で 京都に移り、 ヒモ生活や肉体労働などで食いつなぐ。 ギターが弾けたことから、20歳で キャバレー回りのミュージシャンになり、東京・京都・福岡などで活動。 薬物中毒から アル中になり入院。退院後は 歌舞伎町で 博打三昧をしていたが、金持ちの 人妻と知り合い、ともに日本中を旅する。その後、 同棲していた クラブ ホステスの金で 北海道旅行に行き、そこで綴った日記が 旅行記のコンテストで佳作になったことで、小説家を目指すようになる。

WIKIPEDIA

こんな人、オートバイと似合いすぎるね。

オートバイに対する感受性の問題

普段、このブログメディアではモーターバイク、モーターサイクルと表現しているけれど、この本に倣って今回は「オートバイ」と呼ぼうと思う。その方が何となくワルな感じもする。不思議だな。

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ぼくはオートバイを「日常を冒険に変えるカギ」と位置付けている。そしてそうしたカギを持つことを男子の嗜みと考えているわけだ。カギは多いほどいい。そういうカギを持っていれば、ぼくたちは少しの間、日常という時間の流れから離れることができる。

それがぼくの言う冒険だ。

ロードバイクでも冒険はできる。でもオートバイならそれはまんま大冒険になり得る。

クルマは日常の延長になりがち。だから冒険へのカギになりにくい。クロスバイクもそう。

でもそれは縮尺(モノサシ)の問題だから、見方を変えれば冒険と言えるけど、ロードバイクやオートバイのモノサシで見ると、クルマやクロスバイクは冒険へのカギとしてはやや物足りないと個人的には思う。

冒険にはリスクが伴う。

これが当たり前。映画やゲームの冒険譚には何のリスクもないけれど、日常を冒険に変えるには当然ながらリスクがある。

ぼくなんか、クロスバイクで落車しただけで3ヶ月くらい左腕が上がらなかった。ロードバイクでダウンヒル中に転んだり、オートバイで転倒したりしたら、もっと深刻なダメージを負う可能性がある。

当然だ。

だからこそ冒険になるのだ。

死の気配

生死を賭けるような危険を冒す、というのも無茶な話のようですが、生ということの真の意味がここにあるのではないでしょうか。生とは死を意識すること、なのです。

自由に至る旅

オートバイという乗り物は、ときに死を垣間見せてくれる。いや死の気配というものを感じさせてくれる力があるのです。死の気配とでもいうべきものは、実はほとんど皮膚感覚のようなものです。エアコン完備の自動車はどちらかというと日常生活の延長、残念ながらこの皮膚感覚を得ることができないのです。

自由に至る旅

ここに書いてあることに、ぼくは100%同意する。別にいますぐ死にたいわけじゃない。ただ死について考えることが生だと、ぼくも思うからだ。死に思いを致さない人をぼくは軽蔑する。言葉は厳しいが本当にそう思っている。

それはぼくの個人的な経験から来ている。だからこの思いは変わらない。ぼくは生を全うするために、常に死を感じていたいのだ。

オートバイに求められる知性

花村萬月が説く適性も面白い。別にアウトロー気取りのメンタルが必要なわけじゃない。

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面白いもので、オートバイに対する向き不向きは、日常的にいわれる運動神経とはややべつの要素があるようです。(中略)それとなによりもオートバイは頭が悪いとだめなんです。すごく知性を必要とする乗り物ですね。多少運動神経が鈍くても頭のよい者はカバーできてしまう。

自由に至る旅

ぼくは死について考えるのと同じくらい、オートバイに乗ることは思想的な行為だと思っている。

自ら選択する孤独

オートバイは基本的に一人で乗るものだ。だから人を運ぶ道具としての効率は悪い。クルマは便利だ。でもだからこそ、オートバイには孤独への意志のようなものを感じる。

独りで走る野宿旅のよいところは、人と交わらなくてすむことです。(中略)押し付けられた孤独は辛いものですが、自ら選択した孤独は、その感傷的側面をもふくめて格別です。

自由に至る旅

あなたには孤独になる自由、がある。(中略)旅先で人恋しくなったら、即座に家に帰っていいのです。

自由に至る旅

ある程度の期間、独りで旅をすると、他者に優しくなれるのです。それはとりもなおさず自分が癒された、ということなのですが。

自由に至る旅

これらの言葉はぼくにとってかなり刺さるものだ。

さあ孤独を愛する者よ、旅に出よう

この本は第一章が一番いい。ぼくにとって、であるが。オートバイとは何か。またなぜそれをぼくは欲しているのか、その理由が文学者の筆によって書いてある。それを読むのはとても楽しいことだった。

その先はツーリングについてのいろいろなお話が書いてある。北海道のソロツーリング。確かに楽しそう。でもアウトドア志向ゼロのぼくは、現段階でそうしたツーリングにものすごく惹かれているわけではない。

それよりもただ普通の日常が死の匂いによってほんのりと充実すること、を望む。

だからぼくが始める旅は最初は小さくてもいい。

それでもただ一人で、オートバイに跨り、小さな冒険に出よう。

孤独を愛する者よ、旅に出かけよう。

オートバイとともに。

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