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社会学者の宮台真司が語る「コミュニティ」と「身体性」の話が興味深い。

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宮台真司とぼく

社会学者の宮台真司が好きだ。もちろん、我褒めの多いところ、モテ自慢的なところなど嫌いな点もあるけれど、露悪的なところも含めて総合的には好き。実はぼくは宮台真司と仕事上でも接点があった。宮台先生と書きたいところだけれど、それだと仕事っぽい物語になるので、あえてここは一個人と著者という関係性を重視して、宮台真司と書かせてもらおうと思う。

ぼくは博報堂を辞める前に、インターネットが旧来メディアを蘇生させる、というビジョンを持っていた。もともと大学の卒業論文でもインターネットによるオルタナティブな国家の可能性を書いたこともあり、ITによる新たなネットワーキングが国家に代わる存在になり得ることも想定していたわけだ。

そんな経緯もあり、特にAMラジオのリスナーをネットワークして、もともと共同体性を帯びていたこの集団に向けた新しいサービスを立ち上げることで、ラジオの可能性を追求しようと考えた。TBSラジオと文化放送が興味を示してくれて、TBSラジオと「遊学舎(ユウガクシャ)」というサービスを立ち上げた。

当時のぼくは36歳。リスナーコミュニティをリアルに運営する企画と制作に奔走した。特にご一緒させて頂いたのは生島企画室の生島ヒロシさん。TBSラジオのYさんとともに、随分と面白いお仕事をさせて頂いた。とあるイベントをTBSホールでやったとき、生島ヒロシさん、阿部譲治さんがゲスト、なぜかぼくが司会。(笑)

そのイベントでご一緒させて頂いたのが宮台真司(さん)。仕事での縁が繋がらなくなった後も、なんとなくその説はチェックして、彼の著作はだいたい読んでいる。彼の場合、やはりTwitterがいい。でもインタビューなどもいい。インタビューで必ず切れ味の鋭い言葉、キーワードをぶち込んでくる。こんな人はそういない。

突然、あるインタビューが目に入った

今日、ぼんやりとTwitterをみていたら、宮台真司がぼくのあまり知らないミュージシャンと対談している記事が目に入った。

良いコミュニティと悪いコミュニティ

というキーワードに惹かれる。

でも、実は引用したどなたかのツイートに書いてあった言葉にもっと惹かれた。

社会がダメになると人が輝く

この言葉。いい。ぐさっときた。

今、明らかに社会がダメになってきた。ぼくは56歳だが、日本社会がここまでボロボロにダメになっているのは見たことがない。だが、宮台真司はもっとダメになる、もっと一気にダメにしたほうがいいという。

それが、

加速主義

だ。

ぼくも同じような感覚はある。徹底的に落ち切るところからしか這い上がれない、という感覚。日本は敗戦して焼け野原まで落ちたから、再興できた。東日本大震災も今回のコロナ禍も、被害を直視せず、現状を糊塗しようとするからダメなのだ。全ては事勿れ主義が招いたこと。宮台真司のいう、ヒラメ、キョロメの大人がダメなのだ。

コミュニティと身体性

この記事、長いけれど、最重要なキーワードは「コミュニティ」そして「身体性」だと思った。すごく雑駁にまとめると、ITは利便性に富んだものだがそれは人間からある種の能力を奪う、という指摘だ。これはバイク乗りにはポピュラーな視点。バイクは極めてアナログで、電子制御はされているが、操る人の身体性で補うことを前提に作られているからだ。

剥き出しの身体は風や匂い、振動に常に晒されているし、それが故に五感は常に開かれている。つまり、身体性はバイクという存在にはあらかじめ組み込まれているのだ。だから、ぼくはバイクが好きなのだと思うし、宮台真司のこういうところが好きなのにも理由があるのだな、と思う。

インタビューから気になる言葉を抜き出してみよう。宮台真司もバイクに乗ればいいのに。どこか同じ目的地にそれぞれソロツーリングで向かって、酒でも飲みながら話してみたりしたいな。

時代が進むと、違法だったストリートミュージシャンが、資本主義のシステムに合法なものとして登録されます。キーワードは資本主義です。資本主義に代表されるシステムは、貪欲に外を取り込む性格があります。なので、同じところに留まっていると、10年前はシステムの外だったはずが、いつの間にかシステムに登録されていることになります。だから絶えずダイナミズムが必要なんです

宮台真司

つまり、転がり続けることだ。ローリングストーンだよ。

〝Think different〟の意訳は〝あなたの考えは間違っている〟です。そこにあるのは実践のダイナミズムそのものです。

宮台真司

アップルは基本的にロックだから、世界に愛されるのだ。

今の日本人が知る身近な共同体は全部、権力の手足=行政村です。共同体の中にいるのは、権力を上目遣いでうかがうヒラメと、周囲の様子をうかがうキョロメだけ。本来の共同体=自然村はそんなものじゃない。共同体の掟は、国家の法と衝突して、当たり前。だから、共同体がそもそも抵抗の拠点なんです。でも、日本以外でも、ボンヤリしているとシステムに取り込まれ、自然村が行政村になり下がります。

宮台真司

日本の惨状は、圧倒的な「感情の劣化」によるものだというのは宮台真司が近年ずっと指摘しているもの。ぼくは個人的にこの観点は、岡潔がずっと書いている「人間の中心は情緒」という話と同じだと思っている。岡潔は彼独自の日本人論で、日本人は情緒が美点だと書いていた。当然、今はそうではない。日本人は中心から腐ってきている。そうぼくも思う。

劣化した日本人は、何かにつけ〝国は何をしているんだ〟とホザきます。そもそも国は、掟がカバーする小さな領域の細かいことは分かりません。何かが決定されたとき、仲間の各人がどんな目に遭うか想像できて気に掛かる、という掟的な感情の状態が必要です。つまり〝民主政の民主政以前的な条件〟としての感情の働きが要ります。この感情が働くかどうかが〝良い共同体〟かどうかを決めるんです。アメリカやヨーロッパに比べて、今の日本がいかに劣っているかがわかります

宮台真司

東日本大震災のとき、ぼくは日本全体で感情が動くのを感じた。だが、そこから10年で日本の共同体は完全に破壊されたと思っている。今は全て損得が優先する。そういう状況を政治が作ってきた。それを市民が許容してきたからだ。そして最後の最後に感情の爆発が起こるのが日本のような気がする。これから怖いフェーズに入りそうだ。

まず〝悪い共同体〟を破壊し尽くすべきです。でもシステムが盤石に見える間は壊れません。ところが今はコロナ禍。以前から壊れていた日本のシステムが、劣等ぶりを露(あら)わにしました。例えば、感染死者が少ない東アジアでも、2020年通年で見ると日本の死亡率は台湾の93倍、中国の8倍です※6。日本の負け組ぶりが露わになった今こそがチャンスです。2018年に日本は一人当たりGDPが韓国に抜かれ、2019年に平均賃金がイタリアに抜かれG7で最下位になり、韓国にも抜かれました※7。アメリカやヨーロッパの高いところに比べて平均賃金は半分。経済指標では日本は完全に終わりました。微修正で改善できる余地はゼロ。だからどんどん落ちます。でも、これは良いことです。市場や行政といったシステムにぶら下がるのを当然視する持続不可能な生き方を、変えるチャンスが訪れました。

宮台真司

そう。マクロデータで見ると「日本はすごい」という事実は皆無。なのに、マスコミは日本はすごいといい、アホな国民はそれを鵜呑みにする。もはや世界の誰も日本がすごいなんて思っていない。というか、そもそも、グローバルな評価経済の中では、すごいのはタレントのある個人であり、国家ではない。

一部で新しい生き方を始める人たちがポツポツ出てきた。社会という荒野を仲間と生きる人たち。やるべきことは、第1に人が近隣で繋がって〝良い共同体〟を作り、第2に〝良い共同体〟同士が国境を越えて繋がって知恵とリソースを融通し合うこと。ITなどのテックを使い、昔なら繋がれなかった共同体同士が知恵とリソースをシェアし、エンパワーメントし合う。そこがポイントです

宮台真司

これは似たようなことを、経済学者の安冨歩も言っている。

ただ、その際に注意すべきことは、システムが豊かになると、心身の能力がどんどん奪われること。Googleマップの例で話しましたが、テックがいろんな負担を免除してくれるのは良いけど、そこに疑問を持たないのはまずい。例えば、仮想現実や拡張現実のテックを介した豊かな体験があるのは否定しないけど、そのせいで自分たちの身体性や人間同士の絆が奪われるのはまずい。そこで僕は、人間を劣化させる〝悪いテック〟と、人間の心身を豊かにする〝良いテック〟を区別するように提案してきました

宮台真司

僕はなぜ加速主義を推奨するのかというと、下降がゆっくりだと適応してしまって気がつかないからです。世界や未来が急速に暗くなってきたからこそ、いろんなことに気づけるようになりました。でもまだ下降の加速が足りません。だから沈みかけた船での座席争いを続けているんです。だったら沈没してしまえばいい。そうすれば座席がなくなるしょう(笑)。

宮台真司

これが宮台真司のいう加速主義。ポジティブなアナーキズム、とでも言えば良いのだろうか。好き。

だから生き方を変えるチャンスなんです。社会に適応して後ろ指を指されないように座席を得ようとするのをやめて、もう沈むんだからゴムボートで漕ぎ出せよと。良き仲間と漕ぎ出せば、仲間と一緒にどこかに漂着し、何かを作れるはずです。それって楽しいことだよって。20年も同じことを言ってきたけれど、メッセージが学生に急に伝わるようになりました。だから下降の加速は良いことです

宮台真司

ぼくは最初から、社会に適応して生きることができなかった。11年頑張ったけど。ゴムボートで漕ぎ出して20年経つ。最近、ゴムボートの劣化が気になるところだけどな。(笑)

日本人はしがみつく。だから終わらないと始まらない。コロナ禍の今が終わらせるチャンスです。ちゃんと終わらせて、ヒラメ・キョロメの〝悪い共同体〟ではなく、真実を伝え合う〝良い共同体〟を始めるんです。中国や韓国からいろんな国際的な表現者が出てきているけれど、今の日本はダメです。単なる内輪の盛り上がりだから。日本が1回沈めば、日本の表現者が世界にとって意味のある表現を発信できるようになります。もはや日本はどうにもならなくても、世界には貢献できます。それでいい

宮台真司

日本は他に先駆けて、80年代に社会がクソ化して、言外・法外・損得外を失い、人がクズ化して、言葉の自動機械・法の奴隷・損得マシーン化しました。日本人の一部はそれを知っていた。

宮台真司

80年代から社会がクソ化した。(笑)

世界に向かって、日本化は終わりの始まりなのだと伝える必要があります。僕らは実際に経験したので伝える資格があります。それを続けることで、運が良ければ、日本が悪い場所から良い場所に転じるかもしれません

宮台真司

ぼくの嫌いな言葉の一つに「課題先進国」がある。解決したのなら言ってもいいが、何一つ解決できないのに「先進」ってなんだよ。こういう適当な言語が本当に、心の底から、大嫌い。ぼくは言霊を信じているので、言葉を適当に使う奴が大嫌い。

日本すごいではなく、日本はクソだ、という前提に立って、そこから這い上がり、新しい共同体を構築すること。それが1960年代生まれのぼくらの使命かもね。

まずは実感からだ。キーワードは身体性。そのためにぼくができることは、オートバイを勧めることだ。ITで完結するクルマでは身体性、身体感覚を回復できない。

「マトリックス」や「百億の昼と千億の夜」などで描かれている共同群生。まあ、人が、個性のない、ニョロニョロ(ムーミンのな、伝わるか?)みたいに描かれているあれだ。あれになってはいけない。

まあ、控えめに言って、宮台せんせ、最高だよ。


身体の感度をしっかり上げていくこと。そこからしか始まらないのではないか。

結論、オートバイに乗れ。

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