東京は世界一の音楽都市
ぼくは音楽が好き。ピアノも弾きますし、ギターも弾きます。演奏するのは好きですが、オーケストラ音楽を聴くのが本当に好き。100名を超える奏者が音を重ね響合わせる様にはいつも感動を覚えます。
本当は複数のオーケストラを支援して、毎日コンサートに行きたいくらい。東京にはプロのオーケストラがなんと10もあります。そんな都市は世界に2つとない。
パリもニューヨークもベルリンもウィーンも東京ほどオーケストラコンサートが多くありません。そう、東京はオーケストラコンサートを聴く、という意味においては世界最高の都市なのです。
ぼくが東京港区に住んでいる理由の一つ。それはすぐ近くにコンサートホールがあることです。自宅とオフィスのある麻布十番から一番近いのは、溜池のアークヒルズにあるサントリーホール。やはり日本で最も音のいいホールといえます。
渋谷に行けばオーチャードホールがありますし、初台にはオペラシティ武満メモリアルホールがある。池袋には東京芸術劇場が、そして上野には懐かしい東京文化会館がある。中規模、小規模のホールもたくさん。
ぼくは、
オーケストラ音楽の実演を気軽に聴きたいがために、都心に住んでいる
といっても過言ではありません。
コロナ禍で喘ぐオーケストラ
そんなぼくが愛するオーケストラは今、大変な苦境にあります。新型コロナウィルスによる感染症パンデミックは飲食業だけではなく、他の産業にも大きな打撃を与えています。エンターテインメント産業もその一つです。
オーケストラ音楽、別の言い方をすると「クラシック音楽」になるでしょう。少し違いますが、汎用的にはそう言えるでしょう。クラシック音楽ファンは、正直数が少ない。特に日本において。それに高齢化が著しい。そう思います。
ぼくが最近推しているピアニスト、アレクシス・フレンチも「聴衆が限定されている」と話しており、だからこそ「新たな聴衆を生み出したい、新たな音楽を創造したい」と考えているのでしょう。
ぼくもその通りだと思う。
長期的に、
新たな聴衆を生み出す、新たな音楽が必要
だと思います。
現在のオーケストラがそれができているか、という真っ直ぐな問いを立てると、おそらく完全にはできていないでしょう。
海外に目を転じると、先進事例はいくつかあります。例えば、サンフランシスコ交響楽団はIT企業群と連携し、音楽教育の領域も包含する形で社会貢献を行う形を模索しています。これは素晴らしい取組だと思いますね。
参考図書はこちら。日本のオーケストラと企業、地域のコラボレーションのあり方も、こんな事例を参考にイノベーションが起こればいいと思いますし、できればこれからの生涯をそんな仕事のために使いたいな、と思っています。
つまり、東京のオーケストラは企業からの寄付をベースに極めて限られた聴衆のために存在してきたため、ビジネスとしての基盤は決して強くなく、そこにコロナのインパクトが来たため、どこも苦境にあるのです。
オーケストラを支援したい
小さな会社の経営者であるぼく。
そしてオーケストラ音楽を心から愛するぼく。
オーケストラ音楽を聴くために都心に住んでいるぼく。
そんな自分として、オーケストラを支援したいというのは自然な気持ちです。本当は全てのオーケストラを支援したいのですが、それもなかなか難しい。ということで、ぼくはご縁のあった東京フィルハーモニー交響楽団を支援してきました。
きっかけは仕事でちょっとしたピンチにあった時、ふと聴いたコンサートが東京フィルのものだったからです。プログラムはマーラーの交響曲第5番でした。葬送行進曲から壮大なファンファーレに至るマーラーの5番は、音楽療法的にも効果的と言えると思います。
そして演奏も素晴らしかった。
さらにプログラムをパラパラとめくると賛助会員企業の芳名がずらり。さらにアイウエオ順で見ると弊社の属する「イ」の欄にはどこの会社名もない。これは広告効果もあるかも、なんて思い、賛助会員になったのです。
在京のオーケストラは10あると書きましたが、当然それぞれの懐事情は異なっています。NHK交響楽団と読売日本交響楽団は親会社がある、比較的財務基盤の安定したオーケストラ。
それに対してぼくが支援している東京フィルは、コンサートと講演機会をとにかく増やして演奏会チケット販売と企業のスポンサードによって生計を立てているオーケストラです。
他のオーケストラも上記の2つのタイプのバランスで性格が分かれていると思いますね。東京フィルは演奏会を多くこなして維持されてきたオーケストラなので、今回のコロナ禍の影響は極めて大きく受けていると思います。
ぼく一人、あるいはぼくの会社一つの支援に大きな意味はないことは、ぼくが一番よくわかっている。それでも何とか役に立ちたいと思い、改めての支援を申し込んだのです。
もちろん、今年も支援するのは東京フィルです。他のオーケストラも支援したいですが、それは別途、とある企画を進行中なので、それが準備できたら公開していこうと思います。
東京フィル2021年プログラムは魅力的
実は昨年のプログラムにはあまり惹かれませんでした。ちょっと古典的なシンフォニー中心のプログラムだったので。それに昨年はStay Homeで引き篭もりだったのもあり、コンサートに出かけたいという気持ちも萎えていました。
でも流石にそろそろ我慢ならん。オーケストラの響きに飢えてきてしまいました。こればっかりはどんなに高音質なオーディオセットを組んでも、実演の響きには及ばないのです。
今年のプログラムはこんな感じ。ちょっと丁寧に期待を込めて紹介してしまいましょう。
2021年1月第946回定期演奏会
このコンサートは今週末に迫ってきています。超楽しみなプログラム。ラヴェルはぼくが最も愛する作曲家の一人。「ダフニスとクロエ」もぼくが最も愛する曲TOP10に入っている気がします。第2組曲は大学生の頃に指揮をしたこともあります。この演奏会では第1組曲が聴けるのがとても珍しい。ここまでやるなら、全曲での演奏会になるのが普通ですね。バッティストーニはラヴェルとストラヴィンスキーのいずれも組曲が好きなのかも知れません。
ラヴェルはもちろんですが、ストラヴィンスキーもぼくが大好きな作曲家の一人。「火の鳥」は盛り上がるので念頭の景気づけにはとてもいい選曲だと思いますね。楽しみです。
2021年2月第949回定期演奏会
東京フィルの数ある演奏会の中で心に残るような高品質な演奏というと、ほぼこのチョン・ミュンフンが指揮したものです。特にマーラーはとても素晴らしい。5番、9番は名演として記憶されています。他にもフォーレの「レクイエム」とベルリオーズの「幻想交響曲」などは最高に素晴らしい演奏でした。まさにコロナ禍からの復活を祈念しての選曲。マーラーを得意とするマエストロ・チョンなので、この「復活」も期待できそうです。
ちょうどYouTubeに上述の「幻想交響曲」の演奏会の様子がありました。ぼくも実演に触れて最高に興奮しました。お時間のある方はぜひ。
2021年3月第950回定期演奏会
3月は才人プレトニョフによる「我が祖国」です。プレトニョフは独自の世界観を持つ人で彼一流のこだわりのある選曲が興味深い。例えば、一昨年だったかな、グリークの「ペールギュント」を聴きましたが、ユニークだったなぁ。この「我が祖国」もおそらく独自の解釈で聴かせる演奏になるでしょう。モルダウを除くと結構眠たい演奏会になりそうな予感はしますが。ヤナーチェクとかやってくれないかな。「タラス・ブーリバ」とかプレトニョフの指揮で聴いてみたい。
2021年5月第952回定期演奏会
5月はまたまたバティストーニ来日。ピアソラとプロコフィエフという、エンターテインメント性に富んだコンサートになりそうですね。アレクシス・フレンチとバティストーニには新世代の音楽家としての共通項を感じます。その新世代感が炸裂する面白いコンサートを期待しましょう。
2021年6月第954回定期演奏会
6月は尾高忠明指揮でオールラフマニノフのプログラム。シンフォニー2番はいいですね。切ないメロディが美しすぎる名曲。前半はピアノコンチェルト第2番ではなく、パガニーニの主題による狂詩曲を持ってきましたか。どちらかと言えばコンチェルト第2番が聴きたかったかな。カレー&ハンバーグみたいな感じが好きなんですよね。味覚が小学五年生なので。(笑)この選曲だと、カレー&カニクリームコロッケです。(意味不明)
2021年7月第956回、9月第958回定期演奏会
今年最も楽しみなのはこの両プログラムかも知れません。ブラームスの交響曲全4曲の連続演奏会。不思議なことに、ブラームスのシンフォニーはまとめて聴いた方が感動が大きいのです。なぜだろう?ブラームスの音楽も独自のテクスチャを持っているからかな。少し燻んだようマットな音楽といえばいいだろうか。7月の演奏会、おそらく2番、1番の順で演奏することになると思いますが、マジで楽しみ。
2021年11月第960回定期演奏会
2021年プログラムの最後は、またこの男。バティストーニの登場。オーケストラから愛されている彼なので、オーケストラの忘年会の趣なのかも。(まだ11月だけど)曲目はバティストーニ自身の手によるフルートコンチェルトとチャイコフスキーのシンフォニー第5番。
バティストーニは作曲もこなすのか、すごいね。どんな音楽を描いてくるのか、楽しみ。一方でチャイコフスキーのシンフォニーも楽しみ。特に5番ということはホルンが大活躍の名曲。個人的に在京のオーケストラで最もホルンパートのレベルが高いと思うのは東京フィルです。期待して聴きたいですね。
2021年のコンサートプログラムはどれも聴いてみたい、良いプログラムだと思います。オーケストラ音楽は素晴らしいですよ。
オーケストラコンサートも、日常に差し込まれた「夢」のような、別の言い方をすれば「旅」のようなものだと思います。そこは時間の流れが違う。稲垣足穂の至言を借りれば、
音楽は、時間の流れに対して垂直に立っている
のです。日常を旅に変える。あるいは日常に変える。そんなことに興味のある方はぜひ聴いてみてほしいと思います。