ご近所には才媛がいっぱい
ぼくは東京港区麻布十番にオフィスと自宅をセットした職住近接生活をしています。狭い街なので二十年も住んでいると街の飲食店とはあらかたお友達という感じになります。
お店で出会った人とお友達になる、ということも起こります。今回紹介するこの本の著者、岡本純子さんも実はとあるイタリアンレストランで出会った人(女性)の紹介でお知り合いとなりました。これが都心生活の醍醐味だと思いますね。
それにしても麻布十番界隈。才媛がいっぱい。でも本当はもともとそうなのかも。麻布十番に限らず、この世の中は優秀なのは女性ばっかり。男性は既得権益を守ったり継承しているだけの小物ばっかり。そうなのかも知れないなぁ。
実際思い出すと、博報堂の新卒採用面接官を何度か務めた時、圧倒的に女性の方が優秀でした。でも男性と女性で枠の数が違ったので、優秀な女性ではなく、しょーもない男性を二次面接に送らなくちゃいけなかった。なんだかなぁ、と思ったな。
ちょっととっ散らかりましたが、優秀な女性は(男性と比べて)本当にいっぱいいる、ということです。日本ももっとこうした優秀な女性がリードする社会になったらいいのにな。(本気です)
孤独なオジサンへの福音書
さて岡本純子さんの著書で最初に読んだのはこちら。
『世界一孤独な日本のオジサン』です。コミュニケーション力が低いために孤独になってしまうオジサンの性(さが)とそこから解放される処方箋を社会学的に解説する、という本。Amazonのレビューを見ると、孤独なオジサンが色々と反論しているのが涙を誘います。
お前ら、素直になれよ
という感じ。
人間はゾーン・ポリティコン(社会的動物)であるからにして、完全な孤独ではいられません。しかし孤独を好む個人は存在します。例えばぼく。
この分析で明らかになった(もともと自覚してたけど)のは、ぼくは一人で仕事をすることを好み、その方が良いということ。でもそんなぼくでもご飯を食べるのはほとんど奥様のエカテリーナ2世様と一緒ですし、外食するときにはお店の人たちと楽しく談笑したりする。
つまり、真に孤独というわけではないし、そんな風には生きられないわけです。
岡本さんの著書が警告しているのは、本当は人との繋がりを求めているにもかかわらず、コミュニケーション力がない、もしくはその方法を知らないがために望まずして「孤独」な状況に置かれてしまうことであり、そうなってしまうのは圧倒的に「日本のオジサン」なのだ、ということです。
孤独が好きな変人であるぼくが言うのもなんですが、いわゆる「日本的サラリーマン」として何十年も勤めたオジサンが危ない。何度も書いている通り、ぼくは会社も国家も実存だと思っていません。だからそうした概念に自己を預けることはしたくないし、できない。
でも昭和の日本のオジサンはある意味で洗脳されています。そのため、実存ではない概念に過ぎない会社に自己を預けてきた結果、実存である個々人とコミュニケーションする方法を学習しないで歳を取ってしまっているのではないかと思うわけです。
まあ、そんなオジサンがどうなろうと知ったこっちゃない、と言う人も多いでしょう。しかしオジサン研究家を称する岡本純子さんは、そんなオジサンたちに生きる処方箋を授けようとしている。なんとも慈悲深い方ではありませんか。
ご興味のある方、あるいはこのままだと孤独なオジサンになってしまう、と言う危機感をお持ちの方は、ぜひ本を手に取ってみてください。
これからはコミュ力が大事だ
とまあオジサンはもちろんのこと、これからは「コミュ力」=コミュニケーション力が大事だ、と言うのが、岡本純子さんの一貫した主張です。ぼくもその通りだと思います。
そしてこの度、その「コミュ力」について、ノウハウを因数分解して解説する本まで出してくれたので、早速Kindleで購入して読んでみました。題して『世界最高の話し方』です。これまたヒジョーに有益な本でした。
サブタイトルもイカしてます。
1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール
世界最高の話し方・サブタイトル
伝説の家庭教師かぁ。すごい人と飲んでたのね、俺。
でもマジで読んでみると役に立ちそうな情報がたくさん。メモを取りながら読み進めていきました。
個人的にプランを作ってプレゼンテーションするのがぼくの仕事だったりします。たくさんの人の前で講演することもありますし、セミナーで数十人を対象に講義することもあります。
だからなんとなくいわゆる最低限の「コミュ力」はあると思っていたのですね。でも時代は変わり、ビジネスを共通言語としたコミュニケーションだけではなく、それこそ、
誰とでも共感を分かち合える
そんなことを可能にするコミュニケーション力と言う意味では、ぼくも全然ダメでしょうし、学ぶところは多いと思うんですよね。
飲み屋で人気のあるお客さんになったり、女子高生にもウケるお話のできるオジサンであったりするのは、とても偉大なことです。
このpolyphonyと言うメディアもテキストを主たるツールとして使っていますが、今後は映像や音声にも手を出していきたいと思っています。そんな未来を考えると、本当に学ぶべきことは無限にあると思うのです。
「世界最高の話し方」から
本を読むときはメモを取りながら、と言うのがぼくのスタイル。この本を読みながら取ったメモを見返しつつ、ポイントを整理していこうと思います。
13文字に絞り込んだ「魂の一言」をつくる
『世界最高の話し方』
そう。言いたいことを絞り込んで磨き込んで短くする。これは極めて大事です。言いたいことが結構あってそんなに短くできないよ、と言う場合でも諦めずに短くしていく。そのためのノウハウとして、
- たとえ
- 数字
- ベネフィット
- パワーワード
- ?→!(疑問を気づきに)
の5つが挙げられています。ぼくも結構言葉が長くなる傾向があるので、改めて反省しなくちゃ。
そうだね
『世界最高の話し方』
だいじょうぶ
わかるよ
これドキッとさせられるな。おそらくぼくに限らず男性諸氏は気をつけた方がいい。男性は大体「分析」「批評」から入るケースが多い。もともとそう言う脳の構造なんだよね。ビジネスではある程度評価されて「できるやつ」的に思われるかも知れないけれど、一般的なコミュニケーションにおいてはこれはネガティブ。大事なのは「共感」を示すこと、というわけです。「そう・だ・わ」を意識しようっと。いつも奥様のエカテリーナ2世様にも叱られているしな。
リーダーシップは、教官型から共感型へ
この本に書いてあることの中で、最も重要なポイントですね。
ストーリーのテンプレートを活用する
『世界最高の話し方』
Before:いじめられて不幸な女の子
After :プリンセス
気づき:勇気を出せば幸運は手に入る
ストーリーというと「自分語り」と勘違いするのがオジサンの悪いところ。あんたの身の上話には誰も興味ない、っつうの。(笑)
そうではなくて、
わかりやすいビフォーアフターと気づき
これが大事なんですと。なるほどね。ふむふむ。
Show, don’t tell.(絵を見せるように話しなさい)
『世界最高の話し方』
これも刺さるな。文字の人はついつい言葉で説明しちゃう。でも絵の方が伝わることも多い。その通りだと思います。ぼくも言葉の人だと思うので、ついつい自分の言葉の力でコミュニケーションしようとしてしまいます。でも視点を変えて、言葉ではない方法で伝えられないか。もしくは、
ビジュアルで伝えて、言葉で補う
と言うようなコミュニケーションができたら一皮剥けるような気もします。参考になるなぁ。
何よりも偉大なのは、メタファーの達人だ
『世界最高の話し方』からアリストテレスの言葉
これは知らなかった。アリストテレスはそんなことを書いていたのですね。理解を促進する伝え方として「メタファー(たとえ)」を使うと言うのが極めて有効だという話です。岡本純子さんの言葉を借りると、
誰も免疫を持っていない言葉
でそれを可能にできれば大成功ということ。ぼくは個人的にこのメタファーの能力に関してはある程度自信を持っていたのですが、それをもっと意識していこうと思いました。
プライドを捨てて馬鹿になれ。
『世界最高の話し方』
カッコつけて話そうとすることほど、カッコ悪いものはない。
ぐ。これはね、ぼくがずっとできないでいることなんです。プライドが高いとも思わないんだけど、バカになる、というのができないだよね、いわゆる。でも音楽とかガジェットとかの話しているときは完全にバカだと思うんだけどな。永遠の課題です。ぐすん。
声が大事。声はその人そのもの。
『世界最高の話し方』
声で何より大事なのはメリハリ。
カリスマの決め手は実は「低音」
これも納得。これからはYouTubeとかラジオとかで発信して行こうと思っているので、魅力的な声を出せるように頑張ろうっと。
自信は「自信があるフリ」から生まれる
『世界最高の話し方』
これも大事だよね。真面目な性格(俺)なんかだと、自信をつけるにはしっかり準備しなくちゃ、となって全然前に進まなかったりすることも多々。でもある種の「演技」が実を伴っていく、というのは真実だと思う。演技するのが苦手なぼくだけれど、これはある程度意識していきたいなと思います。
「と思います」「と考えています」を減らす。
『世界最高の話し方』
リーダーシップは、ズバリ、語尾に宿るのです。
例に挙げられているのは、現政権の首相。わかりやすいね。これを読んで気になったのは、ぼくが書くテキストも「と思います」が多いということ。これは書き言葉と話し言葉の差異はあるにせよ、気をつけなくちゃいけないな、と思いました。(って、早速「思います」で終わってるけど・笑)
優れたリーダーほど「感情」と「熱気」を操り、
『世界最高の話し方』
その「エネルギー」で人を動かします。
ぼくがこれまでやってきたことは主にビジネスにおいて、重要と思われる情報を伝えることでした。だからある意味「感情」「熱気」は必要なかったと思います。
しかしこれからの世の中、「正しいこと」「有益なこと」だけでは動いていかないと思うのです。「楽しいこと」「面白いこと」「気持ち良いこと」など、つまり「感情」や「熱気」に訴えることが重要になります。その意味で情報発信も着想を変えなくてはいけないのでしょうね。ふむ。
他者とゆるく連帯していくことで、人を自立を手にいれ、真に自由になれるのではないでしょうか。
『世界最高の話し方』
このアイデアは好きです。ぼくもそう思っています。ぼくが好きな言葉の一つにこんなものがあります。
弱い紐帯は強い関係資本
これもまたご近所のオヤジ友達との共通語なんですけどね。
ゆるいネットワーク(紐帯)をたくさん持っていることこそが、生き延びるために重要、という意味です。
また同じような主張は、安冨歩さんも『生きる技法』の中で書いていますね。
ここで主張されているのはこんなこと。
人は依存することで自立する
誰にも依存しない、というやり方では人は自立できない。誰かに「助けてください」と言えること。それこそが自立なんだと安冨歩さんは書いています。
岡本純子さんの主張にもこれと同じ、なんというか「優しさ」を感じます。
「弱い紐帯」「依存」「他者とのゆるい連帯」
これらを得るために、ぼくたちはコミュニケーションを行っていくことになるのでしょう。そしてそれは終わりのない旅のようなモノなんだろうなぁ。
ノウハウを得ようと思って読み始めましたが、すっかり哲学しちゃったよ。ダメじゃん、俺。